編著者 平野 久美子
発行所 中央公論新社
体 裁 A5判 全128頁
「台湾の世界遺産の候補地選定運動を応援したい」。本書は台湾をこよなく愛し、台湾事情に精通する日本人10人の執筆者が台湾の世界遺産級の自然景観及び歴史建造物など厳選した十八か所を紹介した案内書である。
台湾政府は2002年、各国の専門家の力を借り、本格的に世界遺産の候補地選定運動を開始した。現在までに自然遺産、文化遺産、複合遺産など、全十八か所を候補地に選定している。その全か所を執筆者がそれぞれ分担して台湾を訪れ描写。写真を中心に詳細に解説されているところが特徴である。全頁オールカラーによる構成で、地理的な位置やアクセス方法、さらには成り立ちなどが網羅されている。
執筆者が全か所を「熱烈案内」している本書は、まだユネスコに知られていない番外地の今こそ訪れるべきデストネーションである、と指摘する。また、編著者の平野氏は台湾に世界遺産が一つもない現実と日本統治時代の施設をまるで「遺産守り」ともいうべき、大切に守る各地の台湾住民の存在が自身の感慨深さを増大させ、それが執筆を後押しした、という。2014年にはその思いに共感した有志とともに「日本から台湾の世界遺産登録を応援する会」という一般社団法人としての組織も発足させている。
本書で紹介している十八か所はまだ「世間遺産」としているが、これまでの取り組みなど、その「プロセス」が肝要だ、とも。相互の助け合う日本と台湾。好意も感謝もすべては互いの絆があってこそ。ユネスコの精神からすれば国境や政治は皆無である。だからこそ応援するべき価値もあるのだろう。
台湾世界遺産登録にむけた支援イベント
一般社団法人「日本から台湾の世界遺産登録を応援する会」は5月12日に港区虎ノ門の台湾文化センターにて「台湾世界遺産候補地について語ろう」をテーマに講座を開催する。定員は80人を予定。入場無料だが予約制で午後19時(30分前会場)より二時間を予定している。
台湾では近年、世界遺産運動に盛り上がりを見せる。台湾政府も2002年よりこの活動を推奨している。ユネスコの世界遺産条約の精神に準じ、隣国の日本が果たす国際協力として一連の活動の背景にあるものは何か、二人のトークを通じて理由が明らかになるかも知れない。
講座は二部の構成。第一部は「建築史研究者による台湾文化資産の解剖学」でゲストに青井哲人氏を招き、世界遺産候補地となっている歴史建造物から、地方に点在する名もない建築物の魅力までを深堀する。これにより街の歩き方がぐんと楽しくなるコツを伝授する、としている。
第二部は「台湾に世界遺産がなぜ必要なのか」と題し、第一部の講師青井哲人氏と先に「ユネスコ番外地台湾世界遺産級案内」を発刊した編著者の日平野久美子氏によるトークライブだ。
青井哲人氏は台湾の文化保存に詳しい明治大学建築学科教授。平野久美子氏は日本で台湾の世界遺産候補地の応援運動をしており「日本から台湾の世界遺産登録を応援する会」の発足時からのメンバー。講演とトークライブで「台湾の世界遺産」を知見させ、さらなる台湾の魅力と新たな旅のスタイルも模索できる、としている。
問い合わせは台湾文化センター
HP=http//jp.taiwan.culture.tw/information_34_60572.html
(2017/04/27)